先週の後半から、修業先の「三河屋」(千葉県習志野市)がつくっていたような油揚げを、こちらでもつくれるようになってきました。師匠もおそらく合格点をくれるだろうと思います。
豆腐屋の商品でいちばん難しいのが油揚げです。お客さんから「豆腐を薄く切って揚げるんでしょ?」と言われますが、そうではありません。
油揚げをつくるには、豆腐のときよりずっと多くの水を加えて薄い豆乳をつくり、さらに70度くらいに温度を下げてから凝固剤を入れます。ゆるゆるの茶碗蒸しみたいになったところで、よく攪拌し、にじみ出てきた水分(これを「湯」といいます)を根気よく汲み出し、型枠に入れて固めます。これを小さく切り分けてから竹のすだれに並べ、約100kgの重しをかけて1時間ほど脱水し、ようやく生地ができあがります。
まず、120度の低温でゆっくり揚げると、生地が体積比で4~5倍にふくれ、中がふわふわのスポンジ状になります。次に180度の高温で揚げ、キツネ色のかりっとした油揚げが出来上がります。機械でつくった油揚げは薄くてペラペラしていますが、豆腐屋さんがつくる手揚げの油揚げはスポンジが厚くて、ふっくらしているのが特徴です。
とはいえ、やたら手間がかかるのと、ふくらませるのが難しいので、関東では豆腐屋さんの7割くらいしか手揚げの油揚げをつくっていません。協同組合の工場から購入している豆腐屋さんがかなりあると聞きました。私もこちらで何度か失敗し、つくった油揚げを全部捨てたこともあります。
油揚げは、味噌汁の実にしても、野菜などを詰めた「巾着」煮にしても、おいしいものですが、私が好きなのは、横を切り開いて刻んだネギを詰め、オーブントースターで焼いたものです。ネギの代わりに納豆を入れて焼いてもおいしいです。焼きたてに醤油を垂らすと、ビールがぐんとうまくなります(ワインに合うかどうかは知りませんが)。ぜひ、お試し下さい。この油揚げを使った「いなり寿司」も、よろしくお願いします。
店主拝。